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ホーチミン生活、圧倒的なコストパフォーマンス

ho chi minh city travel

※準備中の電子書籍『ベトナムリアルビジネス』より抜粋。

2011年私がホーチミンに移住して働いてみようと思った理由の一つは、ビジネスをやりやすい環境であった事ですが、もう一つの理由は圧倒的な生活のコストパフォーマンスでした。私は起業を前提に転職をして開業資金を貯めようと考えていました。その場合、例えば上海やシンガポールに住んでしまうと貯金できないのに生活のレベルだけ落とすということになりかねませんでした。2010年から私はホーチミン・マニラ・バンコクに旅行しては現地の物価感を確認していたため、移住前にはおおよその生活費を計算することができました。

 

一般的な生活費

まず賃貸料金。ワンルームのシャワー・風呂付きアパートであれば2万円~6万円、2ベッドルーム家族型なら6万円~12万円となります。この値段でも家具一式と、週3回の掃除と洗濯サービスと、無料WiFiがついているアパートが多く、今でも非常に助かっています。その他固定費として、電話・通信代500円(激安)、電気代3000~6000円(意外と高い)、バイクのガソリン代・駐車代・修理費3000円程度。食費は全て外食で且つ夜は酒ありでも12000円、月6万円でいける確信がありました。ちなみに自炊すれば節約することもできるのですが、スーパーマーケットはかなり割高で家族4人分以上を作るのでなければ全て外食に振り切った方が安くあがる可能性が高いです。もちろん体には良く無いため、あくまで30代体力真っ盛りの時に限定しお勧めします。

私は2011年移住初年度は配偶者がいたため、家賃12万円(ホーチミン3区のタワマン)、その他固定費1万円、食費6万円、合計17万円で生活をしていました。東京では家賃12万円、駐車場3万円、その他固定費3万円、食費6万円、合計24万円であったことを考えるとそれだけで毎月7万円がプラスになりました。同時に変動費や交際費もかなり下がります。理由は、ネットショッピングは外国人にとっては使いづらく、東急ハンズのような欲しいものがすぐに探せるようなお店がないことです。また、家具が揃ったアパートを借りていて、引越しも手軽にできるため家に置く物を買うという習慣がなくなりました。洋服に関しても、ホーチミンであれば1年中夏の気候なので衣替えの必要がなく、お洒落をすることに気を使わなくなります。ただし、移住2年目に東京へ行った時、自分はなんてダサい格好をしているのだろうと少し恥ずかしくなりました。今考えるとどうでもよいことなのですが。

 

単身アパートへ

2012年独り身になり、ほとんどの物を捨て最初に住んだアパートはホーチミン1区でも有名な安アパート街グエンディミンカイ18番地にある、家賃2万円のワンルームでした。この部屋は家族の住む6階建1軒屋の4階~6階計6部屋を貸し出しており、日本人や韓国人を中心に外国人が多く住んでいました。私は最上階でエレベーターも無かったため、毎回螺旋階段を目が回りそうになりながら登っていましたが、小さな部屋の窓から見える路地裏の光景はまさに3丁目の夕陽の1シーンのようで「今ベトナムにすんでるんだなぁ」と実感できる場所でした。このタイプのアパートはROOM FOR RENTと呼ばれ、デポジットも不要で家賃を毎月前払いで払うだけです。何も言わなければ毎月更新されて、出て行きたければいつでも出ていけるというシステムです。家賃は2万円(2012年当時500VND)なので、ちょっと焼肉代でも払うような感覚の家賃で非常に嬉しかったことを覚えています。

これはベトナムに限らず、固定費を一気に下げるというのは生活レベルを落とすことではなく、生活をシンプルにし、時間に余裕を持たせ、人生の大切な目標に向けて歩み出す良いきっかけになります。私はこれに気付いて以降、毎年ホーチミン市内で引越しをして、自分の荷物を極限まで減らし続けています。私は物を捨てることを迷った時いつもこう考えます。「もし今部屋が火事になったら両手に何を持って逃げるだろうか」いつもその答えは2匹の犬とビジネス鞄1つです。このビジネス鞄には、パスポート、短期滞在許可証、手帳、ノートPC、クレジットカードが入っており、最悪全てを失ってもこれだけあれば、翌日から部屋を借りて、1日のロスもなく仕事を継続できるからです。

 

戸建て賃貸へ

このワンルームアパートはコスパ最強だったのですが、日本の両親に預けていた2匹の犬をベトナムに連れてくることになったため、もう少し広いところへの引越しを決意しました。この頃ホーチミンで日本人が経営する老舗美容室VAMPに通っていたのですが、そこの男性スタイリストでありバンドも一緒にやることになる山ちゃん(山崎さん)と一緒に一軒家を借りてシェアしないかということになり、犬と共に引越しをしました。そこは前述のグエンディミンカイ18番と同じ通りであり、川を渡ると名前の変わるソービエットギーティン220番という日本人には相当発音の難しい所でした。3階建130㎡はある日当たりの良い駐車場付き1軒屋を7万円で借りました。2人でシェアしているので135千円でもう1人シェアに入れたら23千円という破格の値段で1軒屋をシェアできました。

しかし、安いのには理由はあり、洗濯屋掃除のサービスがついていませんでした。そしてホーチミンの1軒屋の1階はとにかくゴキブリが大量に出ます。生きていれば隠れてくれるので良いのですが、毎朝なぜかひっくり返ったゴキブリが3匹ぐらい横たわっていて、それを片付けなければならないことが何より苦痛でした。さらに追い討ちをかけることが起こりました。それは10月の後半でした。この時期は大潮といって海面が上昇する時期らしく、大雨が降らなくても道路に水が溢れていたりします。とある夜同居人の山ちゃんが「ヨッシー大変だよ」と呼び出してくれて、急いで1階に降りてみるとなんと、一面水浸しです。裸足になってキッチンやトイレを見に行くと恐ろしいことにトイレの便器から水が吹き出しているのです。1階に置いてあったゴルフバッグやギターを2階に上げて一晩を過ごしました。翌朝水は引いていたものの壁には膝ぐらいまで水が上がってきた跡があり、床は砂塗れです。砂というか多分汚物も多分に混じっていたと思います。

翌日大家に説明して、道路側に土嚢を用意してもらい、清掃は自分たちでやりました。しかしその2週間後もう一度同じ自体が発生し心が折れてしまった我々はそれぞれ新しいアパートへ引っ越して行きました。それ以来一軒家に住むのはやめました。ここ数年は中心地から5キロほど離れたホーチミン2区のタオディエンという地区に住んでいます。ここは昔から西洋人が大型邸宅に住み、お洒落な家具屋やカフェが充実している地域でしたが、近年大型タワマンの建設ラッシュで我々日本人も住みやすくなりました。初めて入ったマステリアパートメントタワー42065㎡は85千円でしたが、その2年後マステリアパートメントアンフーができたので引越しし、現在も住んでいますが65千円まで下がりました。

今のところホーチミンのタワマン賃貸は非常にコスパが高く、65千円の家賃ながら、プール・ジム・バーベキュー場が完備され、ベトナムではまだ珍しい24時間警備(出入り自由)となっています。現在の生活固定費(パートナーと2人分)はこの家賃に加えて、電気代5000円(うちは犬がいるので24時間リビングのエアコンをつけています)水道代1000円、通信費2000円(携帯と自宅インターネット)バイク関連5000円、合計78千円です。もう一度いいますが、プールとジムがついて78千円です。豊洲で車ありだったら30万円は下らないイメージです。

 

その他物価

賃貸家賃の話ばかりになってしまったので、その他の物価についてもご紹介します。まずベトナムの朝食の定番バインミーは50円~100円、目玉焼きだけ挟み込んだバインミーオップラーであれば50円、いろいろ入れると100円ほどになります。同じくこちらでは朝の定番フォーは、簡素なもので150円、牛薄切り肉や鳥モモがふんだんに入ったフォーは350円~400円程します。それでも日本風醤油ラーメンやとんこつラーメンを食べると700円以上しますのでまだまだフォーは日本人にとっては安くて美味しい食べ物だと思います。夜になるともちろんお酒の定番はタイガービールですが、350缶をコンビニで買うと60円で、お店で頼むと150円です。生ビールはどこにでもあるわけではないですが、ハイネケンやサッポロの生が300円~400円となっています。2016年ごろからクラフトビールのブームが訪れ、ベトナム産のクラフトビールが流通し始めました。350瓶をスーパーで買うと350円で、お店で頼むと500円~600円ほどします。それでもクラフトビール屋は外国人とベトナム人で連日大賑わいです。

交通費についても触れておきます。ここまで私はバイクで移動をする前提で固定費を計算してきましたが、バイク移動は正直難易度が高く多くの方はタクシーと配車アプリを活用しています。ホーチミン1区ビジネスエリアから5キロ離れた2区のタワマンまでのタクシー代がおよそ500円です。毎日往復すると1000円、1ヶ月3万円になってしまうので、相当なコストとなります。そこで配車アプリ(2020年時点では、GrabGoVietBe3社でシェアをとっています)によるバイクタクシーの出番です。バイクタクシーであれば前述の距離を半額以下200円程度で移動することができます。ちなみにバンコクでバイクタクシーに乗ったことがありますが、車の間をスピード出してすり抜けるのはジェットコースターよりも恐ろしく、喫緊の事態でなければ乗りたくないですが、ベトナムのバイクタクシーは普通の速度で丁寧に運転してくれるので女性でも割と安心して利用できます。

 

最後に

ちなみに、本書はベトナムでビジネスを立ち上げ成功させたい人に向けて書いていますので、紹介はしていませんが、毎月30万円の高級アパートに住み、高級車を運転手付きでハイヤーし(ホーチミン市内に駐車場が少ないため待機しているドライバーが必要)、13万円の寿司や焼肉を食べる生活も普通に存在しています。そしてそれは外国人がメインではなく、いまやベトナム人の成功者の方々がこの生活を謳歌しています。しかし、ビジネスが成功していないうちはベトナムでもいかに生活にかかる固定費を抑えるかは大きなポイントです。固定費を抑えていれば、自分1人になっても最後の最後まで戦えます。