株式会社エスエイウェアハウスは2021年2月、里薬品貿易株式会社に社名変更いたしました。

コロナショック – ベトナムビジネスの現状と行方(追記:4月30日)

corona incident in HCM

コロナウイルス(COVID-19)による経済変動、多分にもれずにベトナムも大きく影響を受けています。特に欧州やアメリカで感染が広がった3月中旬から一気に規制がかかっています。ビジネス環境も危機を迎え、大きな変革期に入っているのは間違いありません。
しかし、私も同じですが、東南アジアのビジネスなど元々そんなに簡単だと思って進出してきたわけではありません。来るべき時がきただけだと思っています。こんなことでビジネスを諦めるつもりはありません。むしろビジネスモデルを洗練するいい機会だと思っています。(キャッシュフローだけは気をつけながら)

ベトナム日系企業のビジネスへの影響

ベトナムにおいてこの規模のビジネス影響は私が住み始めた2011年以来初めてのことです。
中国武漢でコロナが発生したのは2019年末でしたが、ベトナムで対策が始まったのは旧正月後の1月末頃でした。ベトナムに限らず中国や東南アジアの国々は旧正月に1週間から10日程の大型連休を取ります。日本の正月やゴールデンウィークのように工場の稼働は止まり、人々は田舎に戻って家族と共に過ごします。そして旧正月が明けるとその分の売上を取り戻すべく通常業務に戻ります。
しかし2020年はそのようにいきませんでした。ベトナム全体の経済への影響も大きいのは間違いないですが、ここでは日本人がベトナムで営む日系ビジネスに絞って、コロナウィルスの影響について説明します。ポイントは大きく3点あり、学校封鎖、渡航封鎖、店舗封鎖です。また、この状況はベトナムに限らず、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピンでも同様の状況となっています。各分野におけるベトナムの現状をまとめてみたいと思います。

ベトナムにおける学校封鎖

ベトナムでは旧正月後の2月前半には幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専門学校等、全ての学校の閉鎖が発令されました。日本より1ヶ月も早くこの措置が取られています。
別の章でも記載していますがベトナムの医療キャパシティは通常時でも限界を超えていて、集団感染にとても耐えられる状況ではないため、この意思決定は正しいと思います。しかしながら、元々共働きの(むしろ女性の方がよく働く)ベトナムにおいてお母さんの負担は非常に高くなっています。日系企業でも当然ながらお母さんスタッフが大活躍していますが、勤務時間を変えたり在宅勤務にすることで対応しています。
日本人学校も同じタイミングで閉鎖され、結果少し授業が足りないまま小学6年生や3年生は卒業式を迎えました。ここまでは、日本でも同じ様な状況であったかと思います。しかし海外在留邦人には引き続き問題が残っています。ベトナムには2万人(タイには7万人)の在留邦人が居ますが、この状況では今年子供達が十分に教育を受けられる可能性は低く、旦那の帰任を待たずに日本への本帰国をするケースが増えています。
これはコロナに限らず海外赴任あるあるなのですが、ベトナムには日本人用高校が無いため中学を卒業する頃までには、現地のインターナショナルスクール(授業は英語)へ入学するか、日本へ帰国(お母さんと子供のみ帰国、もしくは全寮制の日本の高校へ入学)することになります。最近では高校受験のために長男・長女が中学2年生のうちに帰国して受験の準備をする方も少なくありません。
それが今回のコロナショックにより、小学校6年生、中学1年生であっても早めに本帰国するという決断をしている人が多いです。タイでは学校閉鎖後、日本語で教えてもらえる学習塾需要が爆発していましたが、学習塾にも閉鎖命令が出て、元々表で遊んだり友達同士で出かけることもできない海外ではお母さん達のイライラが募っているようです。
このような状況では旦那様も仕事に集中できていません。駐在員の仕事のパフォーマンスは、奥様の精神状態に影響するとも言われていますので。

ベトナムへの渡航封鎖

学校封鎖以上にビジネスへの影響が大きかったのが渡航封鎖でした。
私のビジネスパートナー達も定期的にベトナム・タイ・シンガポールへ渡航していましたが、入国できないのではないかという情報が飛び交い、情報収集が大変でした。毎週ベトナム政府や日本国大使館からの情報がアップデートされ、最終的に3月22日から全外国人に対し、ベトナム入国禁止としました。最初は中国のみ、次に韓国、そして日本も危ないということになっていた最中にヨーロッパの状況が一気に悪くなり全外国人となりました。
私の様に自宅がベトナムにある外国人はベトナムから出国しなければベトナム人と同じ扱いになるため、日本も含めた他の国に渡航することができなくなりました。
このインパクトはかなり大きく、ベトナム日系企業のビジネスというのは完全にベトナム国内に閉じたビジネスであることは稀で、多くは日本または中国やその他東南アジア諸国と連携しなければならないビジネスがほとんどです。例えば輸出加工業であれば、原料は中国から仕入れ、日本に販売するなど1・2国で完結するビジネスでは無いのです。
ちなみに、IT環境の整った今、テレビ会議をすることは容易なので人は移動しなくても物さえ移動していればビジネスを継続することは可能ですが、少しづつ縮小してしまう傾向にあります。これはコロナに限ったことでは無いのですが、海外ビジネスの難しさは断片的な情報しか入らないことによる関心の低下です。特に日本に本社がありベトナム支店をコントロールしている場合、本社内での関心が薄れていくと必ず事業撤退という選択肢が生まれます。例えば、現地の社員の情報やマーケットの情報が細かく伝わっていたらこの様な判断にならないのです。
そもそもベトナムは人口ボーナス期にあり経済全体が底上げされているので。この問題は私が渡航した2011年から常にありましたが、渡航や駐在をすること以外の施策が見つかっていないのが現状です。

ベトナムの店舗封鎖


学校封鎖と渡航封鎖でじわじわと追い詰められていく日系企業に追い討ちをかけたのが、Bar・マッサージなどの店舗の営業停止命令です。ハノイ・ホーチミン・ダナンの各行政区でタイミングは異なるものの同様の対策が進められています。狭いスペースでの濃厚接触で感染拡大リスクがあるということでやむ終えない対応だと思いますが、食中毒が発生したわけでもないのに急な営業停止命令はやりすぎではないかと個人的には思っています。
店舗封鎖中も家賃の支払いは発生しますし、従業員を解雇するわけにもいかないので基本給は発生します。最初のうちは掃除や新メニューの開発などしても良いですが、お客様が来ないことによるモチベーションの低下は大きいはずです。あと2ヶ月この状況が続いたら日系店舗の撤退も相次ぐのではないかと思っています。
ホーチミンで1店舗作るには100万円〜2000万円の初期費用がかかりますが、この初期費用回収には余程繁盛店にならないかぎり数年を要します。つまりトントンで終わるということです。そのような状況の中で立ち上げたばかりの店舗が封鎖に追い込まれるというのは大変なことです。私も会員制のBarを200万円かけて立ち上げましたが2年かけてようやく回収したという経験があります。
しかしこの様な状況でも強い意志を持った日本人経営者達は諦めていません。フードデリバリーを強化したり、マッサージ店の場所を使って酵素ジュースを販売するなど業態を変えながら売上を維持しています。
フードデリバリーとEコマースは急成長しています。特に4大Eコマースモールである、SHOPEE/Tiki/LAZADA/Sendoは広告合戦をしておりWEB広告市場はEコマース一色です。ネットスーパーも含めたEコマースが2020年コロナショックをもろともせず成長するのは間違いないと確信しています。

2011年から9年間、これまでに無かったビジネス環境の変化はありましたがまだまだ戦えます。こういう時こそ自分を見つめ直し、本当にベトナムで価値のあるビジネスを作り出す良い機会ではないでしょうか。

追記1:3月28日から主要都市にて全てのサービス施設閉鎖

Barやマッサージは先行して閉鎖をしていますが、感染者拡大していることから、ハノイ・ホーチミンなどの主要都市にて、レストラン、ビアクラブ、飲食、ビリヤード、ジム、美容施設、理容店、散髪店など全てのサービス施設が閉鎖になるようです。期限は3月末とも4月末とも言われていますが、長引くことが予想されます。最低限やれることを続けながら、じっと耐えるしかない状況です。ただ、この政府の決断の速さと保健局や公安の対応は素晴らしいものだと思っています。もしかしたらベトナム人の心の中にはベトナム戦争時のホーチミン氏の教えが残っているのかもしれません。「街や家が壊されたらまた作れば良い。独立・自由・幸福ほど尊いものはない」正確な翻訳ではないかもしれませんが、私はこの言葉がとても気に入っています。

追記2:4月1日から15日まで生活必需品販売以外の全ての施設を閉鎖

食料品販売、医薬品販売、銀行など、生活基盤となるサービス以外の施設の閉鎖命令が出ました。さらに、タクシーや配車アプリサービスも停止し、車やバイクを持っていない人は移動もできなくなったため、4月1日から多くの会社でリモートワークに移行しています。

その効果はというと、4月5日時点ベトナム国内感染者241人(ハノイ108、HCM53)、治癒者90人、死亡者0人という状況で、15日の政府判断を待たなければなんとも言えませんが早期に経済活動開始・鎖国状態は継続となるのではないかと想定しています。旅行業を中心に経済的な影響は今後も続くものの、ひとまず死者と感染拡大は食い止められたのではないでしょうか。

追記3:4月23日から生活必需品販売以外の施設の営業を許可

ベトナム全土でのコロナ新規感染者が0名が5日間継続し、人々が外に出始めました。ただし、Barやマッサージ店など感染リスクの高い業種では引き続き営業停止となっています。

昨晩外出をしてみましたが、飲食店などはまだオープンしていないお店が半数です。オープンしている店もお客さんはまばらで、まだまだ人は戻っていきていないようでした。日本及びその他外国からの入国がいまだ許可されていないため、出張者が居ないためではないかと思います。というのも原則出張者は外食をしますので、在住者(特に妻帯者)に比べ飲食店への影響は大きいのです。

1日でも早い全ての業種の再開と、日本からの出張者入国許可を願っています。