私は大学卒業後、組み込みソフトウェアのプログラマから仕事をはじめましたので、プロジェクトという働き方が標準になっています。しかしながら、まだプロジェクト型になっていない業界・業種もあり、古い働き方をしているなと感じます。
今回は、プロジェクト型の働き方について、そしてプロジェクト型の働き方が今後世界の標準になる理由について説明したいと思います。
目次
そもそもプロジェクトの定義とは
この絵にある通り、目的を期限内に達成する活動です。チームと混同されがちですが、チームには期限がないことが多いです。プロジェクトとは、映画オーシャンズイレブンのように、スペシャリストが期間限定で集まり、目的を達成したら解散するというものです。
会社内で、組織とプロジェクトを明確に分けるのが通常の企業のやり方です。例えば、営業部所属のAさんと、技術部所属のBさん、マーケティング所属のCさんを、一つの部屋に集めて、新規事業の企画をする、というのがプロジェクトです。
そのプロジェクト中もAさん、Bさん、Cさんはそれぞれの部署(=チーム)には所属しているという状態です。また、プロジェクトは部署(=チーム)と異なり、複数を掛け持ちすることも可能です。
人は期限を設定した方がやる気がでる
例えば、とある会社が「当社は技術を通して、社会のインフラとなる」というビジョンを掲げたとして、社員はやる気になるでしょうか。よほどビジョナリーな経営者でそこに多大な工数を割かないかぎり、ビジョンでやる気は上がらないでしょう。
一方プロジェクトでは、「3ヶ月後の新製品リリースにむけ、頑張るぞ」とPM(プロジェクトマネージャ)が言うだけで、結構やる気が出ます。期限が明確であることに、モチベーションをあげる効果があるのです。
また、プロジェクトの単位は個人的には1年未満が良いと思っています。1年未満であればまだ会社に所属しているだろうなという感覚があるし、個人的な予定されている未来ともシナジーを作りやすいです。例えば、子供の出産が8月で、プロジェクトの納期が10月なので、なんとかなるな、とか。そうすると、プライベートでもやる気絶頂のタイミングで働いて納期を迎えられるのです。
広くて質の高い人脈を構築できる
想像してみてください。みなさんが地方の素材メーカーの事務職として働いていて、部屋には社員6名、最年長は勤務30年、5年間新卒および中途採用社員も入っていない。こんな環境に居て人脈を作れると思いますか?
上記はすごく極端な例ですが、組織(チーム)に所属することで多数の人との接点が少なくなります。そのために大企業は数年ごとの部署移動などをして、その課題を解消してきたように感じます。
この課題を一気に解消できるのがプロジェクトです。海外のIT企業ではプロジェクトに所属していない社員を、言い方は悪いですが在庫という位置付けにし待機をさせておき、マッチするプロジェクトが出てきたら配置する、という仕組みを取っています。
昔ながらの企業に勤めていると、社内で派遣事業をしているように見えるかもしれませんが、むしろこの型の方が、社内外のスペシャリスト達に出会えて、広くて質の高い人脈を作ることができます。
いがみ合いがなくなり、目的思考になる
同僚や上司との意見の食い違い、いがみ合い、ひがみ、いじめ。これらの根本的な原因は、仕事の進め方の違いにあると思います。例えば、お客様に手紙を1通届けるだけでも、手書きなのかワープロなのか、郵便局なのか佐川急便なのか、そもそも手紙なのかメールなのか、いろんな進め方があります。
その進め方に特に正解はないため、揉めます。その結果「あの人とは一緒に働きたくない」という気持ちになってしまいます。これは非常にもったいないことです。
プロジェクトには明確な目的(=終了条件)があります。その場合、進め方よりその結果目的が達成できるかどうかに人々の関心が変わります。頭を冷やして目的を再認識したら、こんなところで揉めている場合ではないなと考え直します。
これもプロジェクトの大きな利点です。
プロジェクト型が世界の標準となる理由
インターネットの登場以降、情報が人々に回るスピードが早くなり、何年も構想したアイデアであってもリリースした瞬間類似品が出回るという状況になりました。タピオカミルクティーが流行ったとわかったら、ガンガンタピオカミルクティー屋ができてしまうのです。
この世界で成果をあげるためには、最速で立ち上げて、また立ち上げてを繰り返すしかありません。そのためには、期間限定でプロフェッショナルを集める必要があり、従来型の雇用&組織ではスピードに追いつけません。
これは、派遣やフリーランスと同等に語られることもありますが、本質的にはそこではありません。正社員でも大企業でも同じです。才能を持った人が期間限定のプロジェクトを渡り歩くことに意味があります。